内閣は10月24日、クラブ営業の規制を緩和することを主な改正内容とした風営法の改正案を閣議決定した。電子版では同日、紙媒体では翌25日付で主要各紙が一斉に報じた。改正案は本臨時国会に提出され、成立が目指される。成立すれば、ダンス教室やダンスホールが風営法の対象外となり、クラブ営業が店内の明るさなど一定の基準を満たせば、24時間営業が可能となる。超党派の「ダンス文化推進議員連盟(ダンス議連)」が改正を押しすすめていた。改正風営法の第2条第1項における風俗営業の定義は下記の通り。ぱちんこ店は、これまでの7号営業から4号営業に変更される。
風営法改正案をまとめると、①「ダンス」という文言の削除、②「特定遊興飲食店営業」を新設、③10ルクス以上の照度を保つことなどが条件、④大声、乱暴など周辺への迷惑防止措置を講じる、⑤苦情処理に関する帳簿の備え付けを営業者に義務付け、⑥警察署長、営業者、少年指導員、地域住民等により構成される「風俗環境保全協議会」の設置、⑦営業禁止時間を都道府県条例で定める、の以上7点となる。これまでの3号営業と4号営業が無くなったほかに、1号営業のキャバレーと2号営業のキャバクラが統合され、新1号営業となっている。
まず大きいのは、「ダンス」の文言が風俗営業の対象から消えたことだ。これによりダンス教室やダンスホールが風俗営業から除外される。照度が重要な基準となっており、10ルクス以上の照度で午前0時までしか営業しない、かつアルコールを提供しないクラブ営業は一般の「飲食店営業」となる。深夜営業、アルコールの提供を行う従来のクラブ営業については「特定遊興飲食店営業」という新たなカテゴリーに分類され(第11項)、都道府県公安委員会の許可が必要となる。
一方、店内の照度が10ルクス以下の場合には引きつづき風営法の対象となり、改正風営法では第2号営業となる。この新2号営業では、周辺への迷惑等防止措置、苦情処理に関する帳簿の備え付け、風俗環境保全協議会の設置という義務が新たに盛り込まれた。クラブ営業はこのカテゴリーに含まれることになるわけだが、クラブ業界からの要望がすべて認められたというよりは、義務を果たせば条件付きで認められたことになり、営業を保障する法規則が整備されたと見るべきだろう。
クラブ業界による風営法改正を求める動きは、2012年に京都と大阪から始まった有名クラブ店の摘発だ。許可なくダンス営業を行ったという風営法違反(無許可営業)が摘発の理由だった。摘発は東京にも飛び火し、摘発に対する反対運動が活発化。アーティストや文化人もこの運動に賛同し、多くのメディアが記事に採りあげた。2013年5月にはダンス議連が発足。ちょうど政府内では2020年の東京オリンピック開催に合わせ、クラブの深夜営業を解禁することにより外国人旅行者の集客を目指そうという声が挙がりはじめた。最終的に安倍首相の規制改革、成長戦略の文脈に乗った、という流れだ。クラブ業界が風営法改正、規制緩和にまでたどりつけたポイントとして、著名人の賛同を呼びかけ、メディアを動かし、世論を動かしたということが大きい。
クラブという娯楽・余暇活動の場は、ときにドラッグ密売などの犯罪や性風紀の乱れの温床となり、深夜に騒音を出すなどといった、負の側面もある。だが所詮は関わる当事者の意識次第であり、摘発して営業そのものをやめさせていいものでもない。利用者が社会の一部の人たちに限られるという点は、パチンコと共通している。
パチンコ業界では、遊技機メーカーの業界団体などが当局に規制緩和を求めている。だがその詳細は業界関係者であっても知り得ない部分が多く、ほとんどが表に出てこない。このような隠匿体質では、パチンコ業界が世論を動かすことは望むべくもないだろう。
現在の風俗営業の定義
第1号 キャバレー等
第2号 キャバクラ等
第3号 ダンスクラブ等
第4号 ダンスホール等
第5号 低照度飲食店
第6号 区画飲食店
第7号 ぱちんこ、麻雀等
第8号 ゲームセンター
改正案の風俗営業の定義
第1号 キャバクラ、キャバレー等
第2号 低照度飲食店
第3号 区画飲食店
第4号 ぱちんこ、麻雀等
第5号 ゲームセンター
[2014年11月4日・日刊遊技情報]