70歳を過ぎたおばあちゃんは、あるホールの常連客。70過ぎまで独身を貫いてきた。
パチンコをこよなく愛している。趣味といえば即座に「パチンコ」と答えるほどだ。
ある日、このおばあちゃんが店長に身の上話を始めた。店長はこの店に8年ほど勤めているが、おばあちゃんは店長が勤務する随分以前からこの店の常連客だ。
店長はいつも事務所にこもっているタイプなので、ホールに出て顧客とコミュニケーションを取ることもあまりなかった。だから、このおばあちゃんのことも顔を知っているぐらいだった。
おばあちゃんは、若いころからずっと夜の仕事をやっていた。稼いだカネは大好きなパチンコにつぎ込んできた。おばあちゃんがずっと独身だった、ということも合点がいった。
貯金もなくアパート住まいだった。生涯パチンコにいくら使ったか計算するのが怖くなるぐらいだ、というが、パチンコにおカネをつぎ込んだことは後悔していない、という。
店長にもおばあちゃんのパチンコ愛がひしひしと伝わってきた。
さらに、おばあちゃんは店長を驚かせた。
「私ね、命が長くないの。HIVに罹っていて免疫力がどんどん下がっていてね」
月3万円かかるクスリ代は、この年になってもパートで稼いでいる、という。
もうすぐ、大好きなパチンコができなくなることは自身が一番よく分かっている。だから、元気なうちはパチンコを打ち続けたい、という身の上話を店長にしたのであった。
この話を聞いて、店長はおばあちゃんのために一肌脱ぎたくなった。何かおばあちゃんの喜ぶことがしたくなった。
しかも、この店に何十年も通っている常連客だ。
店長はオーナーにも相談した。オーナーもこの話を聞いて心を揺り動かされた。そして、2人で相談した結果、おばあちゃんのために深夜店を開けることにした。おばあちゃんにそのことを伝えると、おばあちゃんも大喜びだった。
こうして、閉店後の深夜から早朝まで3人のパチンコ大会が始まった。コーナーはおばあちゃんが大好きな「海物語」。
朝方まで続いた3人のパチンコ大会の勝者はおばあちゃんではなく、オーナーだった。
これ、フィクションでいいです。
心暖まる内容に見えて根っ子の部分はとても寂しいから…
良いところあるじゃないか。その常連のお婆さんはいい人に出会えてよかったと思います。