前回のコラム「【金丁回顧録#2】袴釘のズレがパチンコの面白さを引き出す 」
ある現場で皆が同じゲージで作成すると話したはずなのに釘整備を終えたAさんとBさんの釘整備を見ると明らかに異なりました。そこで、私はこの“異なる”という疑問をこのAさんとBさんにぶつけてみました。
答えはとても興味深いもので、各々が私の釘整備は”まっすぐ“だと主張しているのです。
当時角度ゲージと言うものが無い時代なので測定する事ができず、どちらの主張が正しいのか、もしくはどちらも正しくないのかは定かではありませんが、こうまで双方違う整備になっていると疑わざるを得ません。
具体的にいうと、Aさんは全体的に左曲がり、Bさんは全体的に右曲がりです。ですから、個々の曲がり誤差が小さくても逆方向のため、2倍の誤差に見えてしまうのです。結局その日は水掛け論で結論は出ませんでした。
それから月日がたち、師匠とも懇意になり本音を伺う事が出来ました。師匠は自分の釘整備が右曲がりであることを自覚しているのです。ですが、それほど大きな曲がりでもないし、一部だけ曲がっているのではなく全体的なものなので結果として入賞率にそれほど大きな影響を与えるものではないということを経験則で理解したとのことでした。
では、何故このような事が起きるのでしょう?
それは人間には利き目というものがあるからです。普通に両眼で見ているつもりでも、実は利き目で見ていることが非常に多いです。片方の目は補佐的な役割で、利き目で見えない部分をカバーするといった感じでしょうか。
嘘だと思ったら試してみてください。とても簡単なことです。まず両目でなんでもいいですから、見た対象物のイメージを覚えてください。そのうえで、左右の目を順番に片目ずつつぶって見てください。どちらかの目をつぶった時、対象物が移動したように見えると思います。対象物の位置が移動しない方の目で見た時が、その人の利き目となります。
つまり正面から見ているつもりでも、実は左右どちらかの目で見ているのです。
そもそも正面から見てないのですから、釘を真っすぐに叩くというのは無理な相談ですよね。逆にどちらで見ても両目で見た時と同じであった場合は、完全に目のシンメトリーが出来ているので、釘師に向いているとも言えるでしょう。
つづく