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所属で変わるパチンコデザインの見え方【ぱちデザM氏の広告ブルブル#4】

社会に出てデザイン業一筋。
パチンコ業界に関わったその長い期間の中で、所属や立ち位置が異なる4つの切り口から見えるものを今回は書いていく。

すべての出来事は、単一の視点から見るよりも、さまざまな角度やポジションから深く掘り下げることで、より厚みのあるものとして楽しめることがあるものだ。

1.パチンコホールを主とする広告代理店時代

多彩なコンテンツを扱うパチンコ。台のモチーフとなるゲームやアニメなどから着想を得て、デザインの幅が大きく広がることに驚き、代理店の技術力の高さにも感銘を受けて入社し私のデザイナー人生が始まった。

私が所属した代理店は、パチンコという分野において、デザイン事務所や他のホール主の代理店とは異なる独自のアプローチを取っていた。

多様なデザインの方向性を提案し、ユーザーをホールに誘致することが目的だが、実際にはホールの決裁者の趣味嗜好に合わせることが代理店の立場としては非常に重要だと感じた。ジレンマである。

私は、デザイン力だけでなく業界知識、人気機種の習熟、他業界での広告事例収集などにも力を入れ、ユーザーとホールの正解の格差を解決する方法を模索していたものだ。

しかし、ホール企業によってデザインの好みや方向性は大きく異なる。

いわゆるパチンコホールらしいバチバチしたデザインを好む人、ユーザーライクでシンプルで見やすさを優先する人、映画広告のような幻想的で奥行きがあるデザインを求める人など、多様な嗜好があった。

正解はないが、そのデザインの方向性が自店に合ってますか?って問いは特に強く求めていた。
(よくあったのが築年数も経ち劣化もある店舗の「豪華・ゴージャスに」気持ちはわかるがそれで広告物を見て行こうってなったユーザーは実際に来店した際にどういう気持ちになるのだろうか。。。)

しかし、これはユーザー視点を持たない限り、うまくいかないことが多いことも実感した。

私は、パチンコやパチスロをプレイすることで、ユーザー視点を身につけ、デザインに射幸性やユーザーがわかるポイントを盛り込むようになった。

このように提供する奥行きが増した結果、ホールにとっても集客効果につながり好評であった。今にして思えば、一方的なデザイナーの視点だけで進めることは反省点が多かったと感じる。

2.パチンコホール以外デザイン事務所時代

「パチンコはもういい。かっこいいデザイナーとして活躍したい」と思い、パチンコホールの代理店を退社。

海外のハイファッションブランドや国内最大手の飲食店など、誰もが知っているようなプロジェクトに携わったが、制限が多く自由度が低いことに気づいた。(パチンコホールの表現自由度がそれだけ広いとも言える)

デザイン事務所では徹底的なユーザー視点が求められることを学んだ。「提供する商品を徹底的に知ること」が必要で、これにより自分が商品の魅力に気づき、それをわかりやすく、魅力的に伝えることができる。

そして、副次効果として、ユーザーを楽しませるにはまず自分自身が楽しまなければならないという真理に到達した。

その後、パチンコホールの代理店に復職することになったが、パチンコを嫌っていたわけではなく、遊んでこなかっただけだということを思い出し、遊技するように。

デザイン事務所時代は、メーカーや提供側であるクライアントが主役であることを忘れず、ユーザーの視点を徹底することが重要だと学んだ。これが今後のデザイン業務において大きな方向性を持つことになった。

3.パチンコメーカーのホール向け販促業務時代

私が携わった仕事は、ホールへのユーザー集客を目的とした機械台のプロモーションだった。

しかし、実際には”販売台数が正義”であることから、機械台を売るためにホールへのプロモーションが重要で、スペックの見せ方について考えることが多かった。

一方、ホール向けとユーザー向けのプロモーションがあり、同じものに対して切り口を変えることは非常に難しいと感じた。

また、パチンコを題材としたコンテンツの版権元とメーカーの間で落とし所を調整する必要がよくあった。例えば、一般の認知度が高い「A」と、版権元が推したい「B」のどちらを使うかなど、デザイン以外の問題もあった。

その結果、「A」と「B」のダブルメインなど、妥協策が取られることもあった。当然インパクトは薄まる。難しい問題だった。

営業と開発の食い違いもあった。あるメーカーではシリーズを通して重厚なイメージであったが、今回は一新させたいというプロモーション担当者と、今までのイメージを発展させた演出で進めた開発者の意見が対立し、全体的なイメージが二転三転することも。

しっかりと定めて欲しかったなと今でも思う。

これらに携わった私だから言えることは、メーカー側のプロモーションはデザインだけでなく、キャッチコピーなど細部にわたりこだわりを持っていることが多くあり、ホール独自の広告とメーカー広告を見比べることで、よりユーザーは遊技の際に楽しめると思う。

4.パチンコホールのインハウスデザイン時代

「インハウス」とは、企業内での製作部署のことであり、日清のカップヌードル、日テレ、ユニクロ、楽天など、多岐にわたる企業が数年前から導入している。業界を問わず、スピードと外注費抑制、品質向上を目的にするところが多い。

私も広くホール・メーカーと携わってきたが、別の視点があるだろうと思い、エイヤでインハウスデザイナーに転身した。目的は「ユーザーをホールに集客すること」であり、広告代理店時代とは異なり、中間の立場ではなくなったため、より直感的なアプローチができるようになった。YESとNOを現場に近いこともあり言いやすく、デザインに反映しやすくなった。

インハウスになったことで、費用対効果の向上を数値を根拠に決定することが容易になった。

 

ユーザーも業界関係者も、単に遊ぶだけでなく、あらゆるものの奥に人が携わり、意図していることを念頭に入れて見て触れると、より一層楽しめる。食事も情報があるとより美味しくなるというのと同じ。(ラーメンなんかは情報を食べてるとも揶揄されている)

好評な「スマスロ北斗の拳」もメーカーであるサミーが芸能人を使ったライブ配信、出荷式などわかる範囲でも相当なプロモーション費用をかけて、ユーザーへの情報発信をしていた。ホールもどんどんメーカーの発信に乗っかったプロモーションをすると費用対効果が上がると思う。

無料なのに使ってないホールも多いのも事実。動画くらい自社HPに貼り付けたり、SNS発信はやっておいた方が良い。メーカー動画は多額のコストをかけて作られてるので質も高くポイントも抑えられててわかりやすくユーザーに刺さるのでオススメだ。

次回はセンスのお話をしようと思います。センスがなくなってくると死神がきます。


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