2019年11月13日、東京都台東区東上野のオーラムビル内でホール従業員の採用や待遇などについて話しあう「情報交換交流会」が開催された。参加者はホール運営企業14社の採用担当者18名。日本遊技産業経営者同友会の人材活用委員会に設けられた〝採用関連分科〟が主管するこの会合は、今年で4期目を迎え、1期につき年4回の開催となる。3回めにあたるこの日、各社の採用担当者は正社員の人事評価制度や産休・育休などの取得状況、さらにアルバイト従業員の社員登用に至るまでさまざまな意見を交わしあった。
「営業情報は絶対に秘匿するという業界の伝統をあえて乗り越えた非常に有意義な会合です」
と語るのは、参加者のひとりである採用担当のAさん。会合では正社員やアルバイトの採用コストといった内部情報にくわえ、離職などセンシティブな問題も含めて議題にされる。年に4回おこなわれる会合のうち、2回は都内、残る2回は温泉地での泊まり込み。会議室でおこなう会合ばかりでは終わらせず、酒の席も交え、より人的な交流を深めていく狙いがあるのだという。事実、参加者同士で毎日のように交わされる〝LINE〟でのやり取りを見せてもらうと、女性アルバイトの選考基準となる「ネイル」についてもこんなやり取りが交わされていた。
「貴社ではどこまで許容なさっていますか?」
「原則OKですが、ラメやストーンが入ったネイルはNGです」
「色とか長さはどうでしょう?」
「ピンクや赤ならばOK。ただ、紫はちょっと……といった感じですかね。長さは業務に支障がなければOKです」
こうした意見交換も信頼関係があってこそ。むしろアルバイトの採用をめぐる各社の試行錯誤が浮き彫りになってくる。
業界の採用事情に詳しいゼロングループ・ZHP総合研究所の阿部剛代表取締役はこう話す。
「サービス業である以上、ホールスタッフに求められる清潔感や接客態度の良し悪しはもちろん大切ですが、異業種との採用競争を考慮すれば、ネイルや髪の毛の色、または制服に隠れるタトゥーぐらいは大目にみてやる必要性を感じます」
時給をいくら引きあげても応募者が見込みどおりに集まらず、見かけを理由に不採用をつづけていると人材確保もままならない。しかし、ホールスタッフの印象は企業イメージにもつながってくるため、選考基準のハードルを安易に引き下げられない事情もあるようだ。ましてや、新卒正社員の獲得ともなると採用競争はさらに厳しいものになっていく。一般的な企業の採用コストが100だとすると、パチンコ業界のそれは2倍~2・5倍。内定通知を出した大学生から辞退されるケースも少なくない。
「学生向けの企業説明会に訪れる就職希望者でありながら、約9割はホールで遊んだ経験がなく、具体的な予備知識さえもちません。学生たちの多くは、この業界を単なるアミューズメント事業、もしくは接客業の範疇にあるものととらえて応募してきますが、親御さんからの反対にあって内定辞退となってしまうようです」(Aさん)