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【特集】悪夢の再現が懸念される「大量撤去」問題 ~段階的な廃棄で〝自縄自縛〟を防ぐ

廃棄遊技機が行きつく先

昨年までの状況で言えば、ホールから撤去された旧規則機は中古機として転売されるか、もしくはホールがもつ倉庫での一時的な保管や廃棄処分の対象となってきた。

しかし今後、中古価値をもたなくなった旧規則機の転売は考えられず、設置期限が迫る遊技機を一時的に保管しておくだけでも倉庫費用の無駄になる。旧規則機にかぎらず遊技機を廃棄する場合は「産業廃棄物」の対象になるため、検定や認定が切れたすべての使用済み遊技機はいずれ中間処理業工場で適正に処分されなければならない。もっとも懸念される問題は、廃棄遊技機の中間処理が追いつかず、かつて厳しく批判された「野積み」や不法投棄が再現されてしまう事態だろう。こうした事態が発覚すれば、ホール運営企業や各団体がこれまでにおこなってきた社会貢献活動も水泡に帰す。

一方、「野積み」などが社会問題化した当時ならばともかく、現在では中間処理業工場や産廃運搬事業者のみならず、廃棄物排出者(ホール)の責任も重く問われるようになり、安易な「野積み」や不法投棄が再現される可能性は低いとみるむきもある。

日本遊技関連事業協会(以下、日遊協)や遊技機リサイクル協会(以下、リサイクル協会)の統計によれば、2018年度に全国のホールから回収処理されたパチンコおよびパチスロの総数は少なくとも約300万台を数える(左表参照。なお、両協会により集計期間が異なるため、一般的な年度単位での総合計にはなっていない)。

求められる適正処理

廃棄される遊技機には〝ゴト〟対策や製造元の機密保持といった観点から遊技機内部の主要電子基板を(パソコンのハードディスクのように)完全に破壊しなければならず、これを厳正に履行してくれる中間処理工場でなければ廃棄遊技機の処分は任せられない。

そこで日遊協や全日遊連、さらに日本遊技機工業組合(以下、日工組)などで構成される「遊技機リサイクル推進委員会」(以下、推進委員会)は、ユーコーリプロ(本社・福岡県福岡市)やエコフレンドリー(本社・大阪府堺市)のほか、全国30数社の中間処理工場を選定し、廃棄遊技機の適正な処分について個別の契約を結んでいる。

また、遊技機を含め、〝指定省資源化製品〟の対象となる製品を年間1万台以上製造するメーカーには「資源有効利用促進法」の遵守も求められ、Recycle(リサイクル=再資源化)、Reduce(リデュース=廃棄物の排出抑制)、Reuse(リユース=再使用)の通称〝3R〟を前提とした製品づくりが義務化されている。

このうちとくにリユースは、製造元が再使用可能なセンサーやそのほかの電子部品を製造元が買い取る関係から手作業によって丁寧に分解されており、残る金属部品や木材、プラスチックなどはリサイクル素材(マテリアル)もしくは燃焼チップに加工されたうえ、別の業者が買い取っていく。遊技機は家電などにくらべると使用期間がみじかく、経年劣化が生じにくいため「リユース部品の価値が高い」との声も聞かれる。

業界唯一の「広域認定」

廃棄遊技機をめぐる現状の仕組みでは、日工組の「遊技機回収管理センター」で一元的に回収依頼を受ける〝広域回収システム〟が大きな役割を担ってきた。原則として産業廃棄物は排出事業者が位置する都道府県の域外へもち出せないことになっているが、日工組はパチンコ業界団体で唯一、環境省からこの原則の適用除外となる「広域認定」を受けており、東京都のホールが排出した遊技機を他県の選定中間処理工場で処分することが可能になっている。

とはいえ、回収の対象はあくまで日工組の加盟企業35社が製造した遊技機にかぎられ、当然のことながらパチスロのみを製造するメーカーは日工組に加盟していない。加盟企業以外のメーカーによって製造された遊技機は、製造元や販売商社が新台への入れ替えを条件に〝下取り〟として引き取るか、リサイクル協会などに廃棄処分を委託する。

いずれにせよ、産業廃棄物は「マニフェスト」(産業廃棄物管理票)によってその流れが厳密に管理されなければならず、処理ルートや埋め立てなどに回された最終処分量も正確に把握されていく。「マニフェスト」による管理を怠った排出事業者および処理業者は、当局からの行政指導ばかりか罰則つきの処分を受けることもある。


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