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【インタビュー】金海基浩常務取締役(ユーコーリプロ)/将来的な組合化は手段のひとつ

ユーコーリプロの金海基浩常務取締役

警察庁は本年5月14日、国家公安委員会規則を一部改正のうえ、旧規則機の設置期限を最大で1年間延長した。この判断を受けた「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」(以下、21世紀会)は、改正規則の施行日となった同20日に旧規則機の取りあつかいについて決議。自主的な撤去計画を策定するに至った。この改正や決議はあくまで新型コロナウイルスの影響によって滞った新台供給の状況を鑑みた結果だが、臨時休業で貴重な繁忙期を奪われたホールに対する支援策のひとつだと受け止めるむきもある。今回の改正および決議がメーカー、ホール、流通、さらに廃棄遊技機の中間処理を担う企業など業界全体におよぼす作用はいかばかりなのか。日本遊技機工業組合(以下、日工組)の〝広域回収システム〟に加盟するユーコーリプロ(ユーコーラッキーグループ)の常務取締役・金海基浩氏に話を聞いた。

――まずは多くのホールが臨時休業に入っていた時期の状況についてお聞きします。

金海 メーカーの下取りやホールからの買取りなどで工場へ運ばれてくる使用済みの遊技機が少なからずあり、ホールの臨時休業中も工場は通常どおりに稼働させるつもりでしたが、今年は例年より2、3日長いゴールデンウイーク休暇をとりました。そのぶんだけ処理数は減ったものの、それほどの影響は出ていません。

――設置期限の1年延長は中間処理事業にどのような影響を与えると想定されますか?

金海 少なくとも当社にかぎって言えば、中間処理の事業計画がすべて白紙に戻されてしまった状況です。当社では来年の1月31日までに予定されていた旧規則機の大量撤去に備え、既存の西日本リサイクル工場(福岡県)や東日本リサイクル工場(埼玉県)のほか、今年の3月25日からは新しく愛知中央リサイクル工場も稼働させてますが、いずれにせよ、今回の延長措置により抜本的な計画の練り直しが迫られています。

――21世紀会の決議では撤去スケージュールがいくつかのタイプに分類されました。事業計画を策定し直すうえでの影響は?

金海 高射幸性機については以前のルールとかわりませんが、問題は毎月15%ずつ撤去していく新しいルールがしっかり守られるかどうかです。中間処理企業としては決議にあった「15%を目途に」という表現が気になります。「目途」になっているとホールの考え方によって解釈がわかれ、毎月の撤去台数にバラツキが生じる可能性があります。

――以前と同じく撤去時期の集中が懸念される?

金海 それは今後の状況次第だと思います。緊急事態宣言こそ解除されましたが、ホールにはまだお客さんたちが十分に戻ってきていません。ユーコーラッキーグループではホールの経営もおこなっていますので、そうした状況はよくわかります。ホールにお客さんたちが戻ってきてくれなければ、たとえ新台が順調に販売されてもホールは買うことができず、設置期限のギリギリまで旧規則機をつかおうとするはずです。ホールの入れ替えがあってこその撤去問題ですから、しばらくは集客の回復を願っていくしかありません。

――世間ではすでに感染第2波の到来も心配され、業界への影響も長引いていきそうです。

金海 ホールにお客さんが戻らず、新台を購入できない状況がつづくのであれば、撤去計画も決議どおりにはすすまず、メーカーの販売数も伸びません。すなわちコロナ禍に端を発する〝負のスパイラル〟だと言えます。メーカーの新台販売数が伸びなければ、メーカーやホールからもち込まれる使用済み遊技機の数も減っていき、処理工場は稼働を止めざるをえません。こうしたスパイラルを断ち切るにはやはり新型ウイルスの完全終息が不可欠です。

――警察庁の規則改正はホールに対する経済的な救済といった側面もあったようですが、実際はどうなのでしょうか?

金海 臨時休業中に発生した損失を埋めるという意味ではまったく効果はありません。新規則機への移行には膨大な支出が必要となり、十分な数の新台が供給されていない状況を考えあわせれば、ホッとしているホール経営者も多いはずですが、今後の入れ替えはホールの体力差を如実に顕在化させていきます。すでに閉店を決めたホールもあるようにこの業界からフェードアウトするケースも増えていくでしょう。関係業種である中間処理業や運送業の経営者にとっても他人事ではありません。

――21世紀会の決議には中間処理業界や運送業界の意見は反映されていないのですか?

金海 残念ながら反映されているとは言えません。

――1年間の延長をめぐり、日工組を通じて意見を伝える方法もあったのでは?

金海 業界の上流に位置するメーカーの声ならばともかく、最下流の中間処理企業が何か言ったところで意見は反映されなかったと思います。ホールにお客さんが戻らなければ影響を大きく受ける業種でありながら、われわれは21世紀会の輪のなかに入っておらず、声も届きにくい状況です。

――中間処理工場が担うリサイクルやリユースは業界内における循環の一部です。メーカーとの縦の関係をかえていくべきではないですか?

金海 ホールばかりかパチンコ製造企業やパチスロ製造企業、販売商社などにもそれぞれ組合があり、遊技機の運送に携わる企業も「遊技機運送協同組合」といった組合を設けましたが、この業界では唯一、中間処理企業だけが組合をもっていません。われわれの声をもっと届けるためにも将来的な組合化は手段のひとつだと思います。

――組合化の具体的なプランやスケージュールはありますか?

金海 現状ではメーカーの要望に沿って使用済み遊技機からリユースできる部品を外し、メーカーに戻すといった役割しか担えておらず、組合化を具体的にすすめていくレベルにはありません。ただ、今回のコロナ禍で海外製部品の調達が滞り、新台の生産に影響が生じたことを考慮すれば、部品のリユースを設計思想に組み込む必要は今後さらに求められていくと思います。メーカーのなかにはすでにそうした発想をおもちなる方もおられます。われわれも中間処理作業からえられたノウハウを生かし、メーカーへ積極的に提案してきたいと考えています。

※本稿は2020年6月18日付け「日刊遊技情報」に掲載した記事をweb用に編集したものを掲載しております。


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