なりふりかまわない手法
あゆちゃんまんさんが店のアカウントで宣伝活動をはじめた時点でのフォロワー数はわずか200人。これをどのように1万4350人まで引きあげていったのか。
「ツイートをはじめて2カ月間ぐらいは、お店の上司から宣伝すべきメニューを与えられていたんです。でも、同僚のスタッフたちと『このメニューやお店のアカウントじゃおもしろくないよね』っていう話になって。だったら内容もアカウントもかえちゃえと。店員個人の名前でアカウントをつくるにしても、本名ではつまらない。なのでその頃、女子高生のあいだで流行っていた〝げきおこぷんぷんまる〟といった言葉を参考に〝げきおこあゆちゃんまる〟とか、もっとみじかく〝あゆちゃんまん〟もいいかなって。とくに意味はありません。ノリで決めちゃいました」
アルバイト店員のひとりにすぎないあゆちゃんまんさんに日々のツイートを任せた店側の管理者は、「集客のことなんか気にせず、好きなことを自由につぶやいて」と彼女のセンスを全面的に支持した。なぜなら、女性店員による宣伝を発案した〝プロデューサーやじお〟氏(ハンドルネーム)があゆちゃんまんさんのクリエイティブな素質を早くも見抜いていたからだ。同氏は『アリーナ川口店』を運営する「三慶商事」(本社・埼玉県)の社員であり、みずからも自社の「アイドル店員」にまつわる発信を長らくつづけている人物だ。
「クリエイティブと言われるほどかどうかはわかりませんが、いまのお店で求人広告をつくる話になったとき、わたしの写真もつかう話になっちゃって。どうせ撮るなら、可愛く写りたいので、顔の角度やアングルもわたしなりにあれこれ考えました。こんなこだわりがもしかすると評価されたのかもしれません」
と答えてにこやかに笑う彼女には、日常会話においてさえ自分自身を飾ることなく素直にアピールできる資質があった。そんな資質を備えたあゆちゃんまんさんは、アカウントが変更された段階で大胆にも「フォロワー数1万人」の獲得をめざす。
「でも、ツイートをはじめた直後はあまりフォロワー数が増えなくて…」
それもそのはずだろう。いくら若く可愛らしい女性だとはいえ、パチンコ店員が自店の宣伝をする試みは、『アリーナ川口店』どころか業界全体でさえ先駆的な挑戦だった。ホール企業が起用しているタレントのツイートとはわけがちがう。そこであゆちゃんまんさんは、まさになりふりかまわない手法に打って出た。
「とりあえずフォロワー数を増やそうと、変顔の画像や動画をよくアップしていましたね。ほかにも歌を唄ったり、有名人の声まねをやってみたり。ツイートもいまより可愛い子ぶっていたと思います」
活動範囲を広げる〝あゆちゃんまん〟
勤務先のためにあられもなくひと肌脱いだ取り組みは、SNSの世界で次第に注目され、3カ月後には3000人のフォロワーを獲得する。返信ツイートも時間を惜しまずこまめに書いた。次のステップである4000人や5000人、またはパチンコ・パチスロのファンにとっては縁起がいい7777人といった節目には〝変顔〟以外にもクイズなどのイベントをみずから企画。あゆちゃんまんさんのイラストがデザインされたシールや缶バッチなど、正解者へのプレゼントは『アリーナ川口店』が用意した。
「企画に参加してくださる方々がどんどん増えて、ほんとうにうれしかったですね。やりたいことをのびのびとやらせてくれた〝やじお〟さんたちにも感謝です」
一方で批判の声もあったようだ。もっとも手厳しい批判はパチンコ業界の仕事をすすめてくれたお母さんから寄せられた。
「私服姿をツイッターにアップするのはいいけど、『何アレ? ダサい』って言ってきたんです。でも、そのあとで可愛い服を買ってくれました」
こうした応援もあり、彼女は活動の範囲をさらに広げていく。全国のパチンコホールスタッフが参加するダンス動画の投稿企画「ドーナッター・ダンス・プロジェクト」では70店舗ほどのライバルを押しのけ、見事に優勝。新たな才能を発揮した。
「6人のスタッフが組になって踊ったんですけど、お店の倉庫なんかでメチャクチャ練習しましたよ。最初はなかなかダンスの振り付けがあわなくて。1日に3時間も踊っていたことがありました」
やがてツイッターのフォロワー数は1万人を突破。前例がない取り組みだけに約2年間を要したが、元祖「アイドル店員」の地位を確立させた彼女は、最近、地方ローカルラジオ局の公開収録にも出演。近く放送される予定だ。
土井たか子は美人になったね
またいくね!
頑張って!