旧規則機の撤去期限まで3カ月を切った。しかし、半導体などの部品調達に遅れが生じ、メーカーの販売計画も見直しを迫られている。さらに使用済み遊技機の排出にからむホール側のさまざま思惑などもあり、業界をあげての撤去計画も目標に届かない状況が続いている。使用済み遊技機の廃棄が期限ぎりぎりに集中すればどうなるか。搬出を担う運送業者ばかりではなく、遊技機を解体する処理工場の能力にもおのずと限界があり、かつて社会問題化した〝野積み〟、すなわち不法投棄に対する警戒感はいまもって根強い。
そこで情報島編集部では遊技機リサイクルにおいて国内有数の処理能力をもつ埼玉県加須市にあるユーコーリプロ東日本リサイクル工場を訪れ、解体作業の流れなどについて取材した。
多様なオーダーに応える処理工場
「ユーコーリプロ東日本リサイクル工場は東日本地域をカバーする廃棄遊技機の中間処理施設です。1日あたりの処理は1500台程度おこなっており、繁忙期には平日の残業や土曜日も稼働させるなどして処理台数の増加に努めています」
こう話すのは同工場の須永俊樹工場長だ。
東日本各地のホールから運送業者によって集められた使用済み遊技機は、同工場内に併設された関東遊技機回収センターへ送られてくる。これらの遊技機はメーカー名、機種名、スペックごとに管理され、解体工程に入っていく。
「処理工場に搬入される使用済み遊技機は単なる廃棄物ではありません。メーカーが再利用するリユース部品のほか、資源リサイクルに回される部材など、有価物が大部分を占めるため、作業は慎重かつ丁寧におこなっています」(須永工場長)
同工場は遊技機メーカーの団体である日本遊技機工業組合(以下、日工組)の〝遊技機回収システム〟に参加している。このシステムを利用できるメーカーは現在35社。主にパチンコ機を製造する企業だが、市場に膨大な数が残る「ジャグラー」については、製造元の北電子が同システムの利用を非加盟企業ながら日工組に打診したうえ、了承されたという。
これらのメーカーがホールから下取りなどで引き取った遊技機は当然メーカー側に所有権が移り、同工場はメーカーから解体処理を引き受ける。機種別にメーカーからリユース部品の指定もなされるため、指定部品は、検品、梱包のうえ、メーカーに戻される。昨今では世界的に不足がちな半導体はもとより、ケーブル類のリユース需要も高くなってきた。メーカーからのオーダーも実に多様だ。
「リユースされる部品の指定はメーカーごと、あるいは機種ごとによっても異なり、工程もその都度変わります。最大で1機種あたり20数点の部品取りが発生します」(同)
同工場はメーカーの要望にきめ細かく応えつつ、メーカー以外の業者が有償で引き取る液晶などのパーツや再資源化されるリサイクル部品もみな手作業によって取り外す。たいへんな手間が求められる作業であり、熟練工の育成も欠かせない。
一方、同工場は社会福祉の一環として障がいをもつ方たちの施設外就労支援受入も行っている。障がいの程度によって勤務時間や作業工程などはまちまちだが、同工場で働く経験を積み重ね、一般就労へつなげており、なかには同工場に就職したひともいたという。