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PCSAアイデア・エッセイの最優秀賞作品 『人々を孤立と不安から護る ~2040年に向けた業界再設計~』(全文)

最優秀賞
浦部 立憲(ウラベ リッケン)
『人々を孤立と不安から護る ~2040年に向けた業界再設計~』

1.2020年、おおいなる不安の中で

いま、パチンコ業界は大きな不安の中にあります。従業員も、お客様も。

「社会の変化から取り残され、消えてしまうのではないか?」という不安の中に。

安心してください。消えてゆくのは「現在の営業スタイル」だけでしょう。

それどころか、パチンコホールが地域社会に創り出す「人と人のゆるい繋がり」は、
高齢社会が進むにつれて課題となる「孤立」に大きな役割を果たすと思います。

この「地域社会円滑化機能」こそがパチンコホール(やゲームセンター)の特長であり、
テーマパークがいかに豪華絢爛でも、ネットゲームがいかに効率的かつ安価でも、
彼らが代替・駆逐することのできないパチンコ業の強みだと、私は思うのです。

そうは言っても、「絆」とか「憩いの場」とか情緒的な言葉を語り続けるだけで
パチンコホールが即座に社会に貢献できるわけではありません。

経営者や上級管理職が経営姿勢を刷新、店長からアルバイトまで未来の仕事術を実践し、
お客様が気軽でレトロなまま先端技術たっぷりのエンタメに触れ合える。

そんな「社会と共に進化できる業界」をいかに構築するか?
自分なりの考えをまとめました。どうぞお付き合いください。

2.2030年、たとえばこんなホール風景

「ねえ、私いくつだと思う?」

愛犬を連れて来店される常連のお姉さまに訊かれた。
ゴーグルの透過液晶に出る会員情報で知ってはいる。
でも、どう答えよう?腕の見せ所だ。

「僕、54なんです。同じ位ですかね?」
「フフッ。冗談でしょ。今日で70なの。」
「信じられない!お若いっ!」
「君も。45ぐらいに見えた。」

ゴーグルに補給トラブルの情報が過る。
すぐ、台裏のアームロボが直してくれる。

「私ね、バブルの頃、ジュリアナで踊ってたの。」
「だからお綺麗なんですね、、今でも。」

いま着ている服も、景品のオーダーメイドシステムを使ったそう。
ホールは60~65デシベル。会話が弾む。

「凄いよね。今の台って。見た目はツルツルじゃない。
でもVRで異世界にいるみたいな演出いっぱいで。
なんか、若かった頃の陶酔感を思い出しちゃうんだ。」

ゴーグルに過去の遊技履歴。10年前はジャグラーだけ。
封入式&メダルレスをゴーグル遊技する時期から多機種化してる。

「嫌だった。不協和音すごくて耳栓してたし、装飾も品が無くて。
VRが出るまでは、母の付き添いの暇つぶしだったの。」

ゴーグルに亡きお母さまの遊技履歴。来週、後継機が登場する。
プライベート情報すぎて迷ったけど、言ってみた。

「そう言えば、お母様が好きだったシリーズ、来週入りますよ。」
「すごい!どうして分かるの?母を思い出しながら打とうって思ってたの。」

ゴーグルからデータベースに来店予測が自動入力される。

良い関係が築けた。着任2週間。昔なら半年は掛かっただろう。

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