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【寄稿コラム】お客様が喜ぶための非常識にチャレンジし続けたパチンコホール

夕方6時過ぎにケータイが鳴った。普段電話してこない珍しい人からだった。

「お礼がしたいといっている人がいるので電話を代わります」

ブログで書いた記事のお礼がしたい、とのこと。場のざわついた雰囲気からすでに酒が入っている様子。電話口に出たのはまだ一度もお会いしていない会長だった。会長といっても年配者ではなく、早々に社長を退いて会長職に納まっていた。

「本当にありがとう。あの記事を読んで創業当時のことを思い出して、涙が出てきた。あの記事は社員にも全員読ませた。初心を思い出すことができた。普段インタビューを受けることはないので、感謝しています。どうしてもお礼が言いたかった」

思いがけない電話だったが、その時の記事の内容を要約するとこんな具合だ。

倒産寸前の実家のパチンコ店を立て直すためにH氏は戻ってきたが、長年、金融機関や外資系の保険会社に勤務していたのでホール経営のノウハウはなかった。

店名を刷新、グランドオープンしたものの、改装資金も潤沢ではなかった。クロスを張り替えただけの名ばかりのグランドオープンで、設備は20年選手のままだった。

店舗を再生するためにH氏が伝手を頼って集まった業界経験者メンバーは4人だった。しかし、ずば抜けて優秀な人材がいたわけではない。釘の技術も決して高くはなかった。

ヒト、モノ、カネもない中、あるのは夢だけだった。

グランドオープンを控え、立ち上げメンバーで飲みに行く機会が増えた。在籍していた保険会社では、未だに売り上げ記録が破られていないほどの優秀な営業マンだったH氏も、初体験のパチンコは不安だらけだった。

「家族もあり、仕事もあったのに、ついてきてくれたが、その恩に報いることができんかもしれん。しかし、絶対、路頭に迷わすことだけはできん。すまん、すまん」と立ち上げメンバーを前に号泣した。

そんな社長の姿を見て、4人はむしろ「やってやろう」と気持ちがどんどん高まっていった。現場に団結力が生まれると店が勝てる雰囲気に変わっていった。

中古の設備に、中古の機械。玉が出ない機械的トラブルも多かったが、スタッフが汗を流しながら必死で対応したので、逆に客からは好感が持たれた。

全員が店長で、全員が経営者の目線で店が動き出した。潰れかけた店が4万5000発稼働をたたき出すようになった。

「感動があるから人は興奮する。感動は完璧なものからは生まれない。完璧でないから感動する。未熟なところを補うために高い壁を乗り越えようと努力するから感動する」

オープン当初はユニフォームを買うカネもないのでユニクロでTシャツと短めのキュロットを調達してきた。キュロットはさらに5センチほど裁断してミシンで縫製した。そのユニフォームがエロカワイイと話題になった。

その後も航空会社のCA風のユニフォームをへそ出しルックにしたコスチュームのスタッフが肩もみしながらお客さんと会話したり、バニーガールがドリンクを運んだり、と斬新なアイデアを次々に繰り出した。

「非常識の中に革命がある。常識の中に革命は生まれない。お客様が喜ぶための非常識にチャレンジする」

現在は会長になったH氏が今でも好んで使う言葉である。チャレンジするから失敗もする。失敗がないと成長もない。むしろ嫌ったのは、失敗を恐れてチャレンジしないことだった。

業界常識からから見ればアホなことをしながら、人間関係を作り上げて行った。人間関係が出来上がってくると顔写真を撮らせてもらって、それをファイルにして顧客の顔と名前が分かるリストにした。それを新人に見せて教育した。

スタート当初の会社にカネはなかったが、何事もチャレンジできる空気だけは早くからあった。挑戦し続けることがこの会社の原動力だった。


コメント:2件 コメントを書く

  1. 実に素晴らしい事です。

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  2. Bですか
    店長でケチが付いちゃったけど、最近は勢い無くしたね

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    2

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