9月のトップニュースの一つとして挙げられるのは、大阪市北区のパチンコ店『FREEDOM(フリーダム)』(運営・アバンス)が、9月13日と14日の2日間、休業した店内で地域住民をはじめ、商店街組合や飲食店組合など約1500人を対象とした新型コロナワクチンの職域接種を実施したことであろう。
パチンコ店内での実施という初めての取組みだったことに加えて、換気能力の高さや左右どちらにも回る遊技椅子、データ表示器などパチンコ店が接種会場に適した施設であるということもあり、テレビをはじめとした各メディアがこぞって取り上げ、業界内外で大きく話題となった。
こうした報道により全国的にその名が知れ渡った同店だが、ワクチン接種から約1週間後の9月22日午後に訪れてみたところ全体稼働率は19.9%。人気機種の「P牙狼月虹ノ旅人」や「PF 機動戦士ガンダムユニコーン」にも多くの空き台が見られている。パチンコ・パチスロ共に通常貸しのみでの営業であることを考えればまずまずと言えるのかも知れないが、報道等による宣伝効果を期待して訪れただけに、少し物足りないと感じてしまった。
ただ意外だったのは、職域接種の実施報告や2回目の接種に関する案内などワクチン職域に関する告知物が一切なかったことだ。イメージアップにつながる社会貢献活動などは大々的にアピールされるケースが多いが、そういったことをしない同店の謙虚さには感心した。
同店を運営するアバンスの平川順基社長はテレビのインタビューに対し、「4日間の休業で数千万円の売上減少とはなるが、お客さんや地域の人に必要とされる企業でないと残っていけないと考えている」とコメントしていたが、同社が今後、どのような地域貢献活動を行っていくのかにも注目したい。
周辺店舗の稼働状況はというと、『大阪ホール天満店』(運営・天満正龍グループ)が全体稼働率43.6%でエリアトップをマーク。8割、9割稼働が当たり前だった全盛期と比べればかなり減ってしまったが、同店の集客力はまだまだ健在だと感じたところ。また、グループ店の『天五店』も全体稼働率38.1%で健闘していた。
ちなみに、今回の調査店舗の中で一番印象に残っているのは低貸専門店の『銀の葡萄』(運営・ベニス産業グループ)だ。
同店はエリアで唯一、台間の飛沫防止ボードを設置していなかった店舗。この時期、飛沫防止ボードがないだけでお客から敬遠されそうなところだが、全体稼働率は37.8%と意外にも賑わっていた。しかも、客層はこうした感染症対策に敏感そうな年配層や女性客で占められ、お客同士で楽しそうに会話しながら遊技する姿も多数確認している。
ワクチン接種が進んでいるからなのか、短い滞在ではその理由までは分からなかったが、同店ではすでにアフターコロナが始まっているかのような感覚を覚えた。