2点目は、ぱちんこへの依存防止対策についてです。
本年3月、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更が閣議決定されました。ぱちんこ業界については、変更前の基本計画に盛り込まれた各種取組を推進することにより、所期の目標を達成したと一定の評価がされています。その上で、今後は、これまでの取組の継続を前提としつつ、更に強化・発展させていくことが求められています。ぱちんこへの依存防止対策が後退したと捉えられることが決してないよう、変更後の基本計画に盛り込まれた各種取組について、引き続き、業界全体で真摯に取り組んでいく必要があります。特に、各種取組については、関係規程の制定や必要な仕組みの導入等のハード面の進捗は一定程度進んでいるところ、今後はそれらが実効的に運用されているかといったソフト面からの進捗も重要になってくると思います。
そこで、変更された内容も含め、具体的にいくつかお話しします。
まず、アクセス制限に関する取組として、自己申告・家族申告プログラムの導入促進等についてです。
自己申告・家族申告プログラムについては、本年10月末現在で約5,700店舗が導入していると承知しています。今後は、同プログラムの導入を前提としつつ、その実効性の確保や、必要な人が利用しやすい環境の構築が求められます。そのためにも、まずは、同プログラムの導入店舗数をより一層拡大することが重要です。業界として、導入店舗の拡大に向けて様々な取組を行っていることは承知しており、導入店舗数も着実に増加しています。しかし、未だに全体の導入率は約7割程度にとどまっており、また、都道府県ごとの導入率に大きな差があることも事実です。導入率が大きく向上した県や100%に到達した県がある一方、導入率が低調のまま改善が見られず、未だ50%程度という県もあります。「会員システムがないから導入できない」と主張する店舗もあると伺っていますが、会員システム等の特別なシステムを必要としない運用分類が業界において示されていることを踏まえれば、未導入の店舗については、依存防止対策に消極的な店舗であると見られ得ると思います。この点については、業界としての取組姿勢が問われていますので、未導入店舗における同プログラムの理解促進に努めるとともに、導入サポート体制を構築するなど、同プログラムの更なる普及が進むようお願いします。加えて、本人同意のない家族申告による入店制限についても、業界で策定したマニュアルにおいてその導入・運用方法が示され、また、大手企業が導入を推進していることもあり、本年10月末時点で約2,600店舗が導入するなど、導入店舗の拡大が進んでいます。しかし、全体的には、まだまだ普及が進んでいないように見受けられます。ぱちんこへののめり込み・依存問題について家族が助けを求めてきたとき、その声に業界として応える、そのための受け皿が準備されているかどうかということは極めて重要なことだと思います。ギャンブル等依存症対策基本法により設置されたギャンブル等依存症対策推進関係者会議においても、家族への支援の在り方が注目されています。各店舗において、家族からの切実な願いに誠実に対応することができるよう、同プログラムの更なる普及をお願いします。導入後の運用については、一般社団法人日本遊技関連事業協会が、申込み受付等の助言をする「家族申告プログラム助言機関」を設置しており、円滑な実施のための環境が整備されています。同プログラムをより充実させ、そして実効性を高めていくことを期待しています。また、複数店舗への一括申請を可能とするシステムの構築等、申請者の負担軽減となる取組の検討もお願いします。 次に、店舗に設置されているATM等については、順次、撤去等が推進されていると承知しています。ギャンブル等依存症対策推進関係者会議において賛同が得られるかや、社会一般からの視点も踏まえながら、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。
次に、依存症対策に係る連携協力体制の構築については、令和元年に、厚生労働省から各自治体に発出された通知を受けて、令和3年度末時点で、39の自治体で連携会議が開催されています。そして、ぱちんこ業界においても、連携会議に参画しているところがあると承知しています。依存防止対策については、関係機関と連携・協力して進めることが重要ですので、引き続き、連携会議への積極的な参画をお願いします。一方、自治体との連携を図る上では、連携会議への参画以外の方法もあります。この点、ある県遊協やホール企業の取組として、関係機関を巻き込む形で、依存問題に関する知識を深めるべく、セミナーを開催した事例もあると承知しています。こうした取組は、依存防止対策と真剣に向き合い、自ら積極的に関係機関と連携しているものと評価できます。こうした事例も参考に、関係機関との円滑な連携を確保するとともに、情報共有等を図ることで、依存症に苦しむ本人や家族のためにより有効な支援がなされるよう、取組を進めていただきたいと思います。
次に、ぱちんこへの依存問題やその対策に関する普及啓発については、昨年に引き続き、ギャンブル等依存症問題啓発週間にあわせて、パチンコ・パチスロ産業21世紀会が、特設ウェブサイト内において「パチンコ・パチスロ依存問題Webフォーラム」を開催し、通年視聴が可能な動画コンテンツを配信していると承知しています。こうした例も参考に、年間を通じた活動の推進により、のめり込み・依存に陥ってしまった方、大学生や新社会人をはじめとする青少年等、幅広い方に必要な情報が届くようお願いします。特に、遊技者の家族に対しては、早期に相談支援につながることができるよう、相談窓口の紹介をはじめとした普及啓発を図るようお願いします。
次に、自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援については、令和元年11月に一般社団法人パチンコ・パチスロ社会貢献機構が設立され、本年度も9団体に対して助成を行うものと承知しています。引き続き、ぱちんこへののめり込み・依存の予防と解決に取り組む団体等に対する積極的な支援をお願いします。また、リカバリーサポート・ネットワークにおいても、ぱちんこへののめり込みや依存の問題を抱える本人及び家族に対する個別相談事業を行っているところ、ぱちんこ業界全体で継続的にその活動を支えていただくようお願いします。
次に、業界の取組に係る第三者機関の活用については、第三者機関として、パチンコ・パチスロ産業依存対策有識者会議が設立され、毎年度、業界の取組について、専門的かつ第三者の視点から評価・提言がなされていると承知しています。ぱちんこへの依存防止対策について、第三者の視点を取り入れることは、その実効性確保の観点から重要であり、PDCAサイクルに基づき業界の取組を改善していくことにもつながります。引き続き、有識者会議を積極的に活用し、依存防止対策を推進するようお願いします。また、同じく第三者機関の活
用としては、一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査によって、ぱちんこ営業者ごとの取組の確認がなされています。このような第三者機関によるチェック機能を活用し、ぱちんこへの依存防止対策について、業界全体というマクロの観点と営業者ごとのミクロの観点から、推進・改善をお願いします。
以上、ぱちんこへの依存防止対策についてお話ししました。業界においては、早い時期からのめり込み・依存の問題に対処されてきたと承知しています。しかし、この問題については、依然として多くの方の高い関心が集まっており、業界としての取組が注目されています。厳しい状況が続きますが、今一度、ぱちんこには、人を引き付ける大きな力があること、それ故、人によっては、遊技が過度になってしまい、負債等の問題にまで至る場合があることを再認識していただきたいと思います。そして、ぱちんこが潜在的に持つ負の側面を防止・抑止するよう努力していただくこと、たとえ、ぱちんこへののめり込み・依存で困っている方が、店舗に来られる方の一部であったとしても、現実にそうした方がいるということを踏まえ、問題解決に向けて業界全体で真摯に取り組んでいただくようお願いします。
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