アドバイザーとの連携
――入店制限の適用を申し込んでいる顧客が来店していた場合、ホールはどのように対応すればよいのですか?
依存防止対策の理想はあくまで本人による自己コントロールなのですが、他者の関与がなければ遊技の頻度や使用金額をうまく管理できない方もおられます。そこで従来のプログラムも含めてホールには自己コントロールのサポートを求めています。
家族から入店制限の申し込みを受けつけたホールは、遊技中の対象者に退店をうながし、家族にも連絡をとってもらいます。このあたりは本人の同意書があるケースと同じです。本人を強制的に退店させる必要はありません。ホールからの声かけが本人の気づきとなり、自己コントロールの一助になっていけば、プログラムは一定の効果を発揮したことになると考えています。
――課題はホールスタッフが本人にアプローチするためのスキルなのだと思います。「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」(以下、アドバイザー)の育成と現場での積極的な対応が不可欠ですね。
家族申告にせよ、自己申告にせよ、アドバイザーには申し込みの段階から積極的にかかわってもらえるよう期待しています。アドバイザーの育成を目的にホールスタッフが受ける講習内容がより充実したものとなり、現場での実効性をさらに高めていけば、プログラムが有効に活用される環境も整っていくと考えています。
共有化で〝抜け道〟をふさぐ
――プログラムへの疑問のひとつに申告するホールが1店のみでは他店での遊技が継続される可能性があり、十分な依存防止対策にならないのではないかという指摘もあります。
政府の基本計画も複数のホールへ申告する際の手間を軽減するよう求めています。
軽減策を2021年度内の実施に間にあわせるため、日遊協の依存問題プロジェクトチームも議論に着手したところです。これまでのように家族や本人がプログラムの申し込みに必要な書類などを地域のホールへ1店ずつ提出するのではなく、申込者の求めに応じて他店も同じ情報を共有化できる仕組みや課題について検討していく予定です。
――家族または本人の求めがなくても共有化が実現する可能性はありますか?
すでにプロジェクトチームのメンバーからもそうした声はあがっており、可能性の検討はしていくことになると思います。ただ、プログラムが適用される本人の人権にも配慮しなければならず、資本が異なるホール同士のシステムを連携させられるかどうかといった点も今後の検討課題です。
――依存防止対策の一環として政府の基本計画は顔認証など本人確認の自動化も求めています。
顔認証のシステム自体は技術的にほぼ確立されているようですが、プログラムの適用にあたって本人から同意をえていても、撮影された映像などは個人情報であり、そのあつかい方や認証精度の問題でもしトラブルが発生したとき、どのように対処すべきなのか、これらについても日遊協の勉強会で検討をはじめました。
しかし、現在の顔認証システムはひとの顔を正面から撮影する前提でつくられているため、カメラの角度や光の加減などによっても十分な性能が発揮されず、認証精度が落ちてしまう可能性もあるそうです。昨今のようにマスクの着用者が多い状況ではなおさらでしょう。
また、顔認証システムの導入には数百万円の費用が必要になるなど、支出面の負担も少なくありません。個社がそれぞれに顔認証システムを導入するべきか、あるいは地域ごとのホールが共同で導入すべきなのか、今後も慎重に検討していきたいと思っています。
――ありがとうございました。