新規則機イヤーとなった2022年。パチンコ業界における長い歴史の中でも節目の1年となったことは間違いないだろう。実に様々な出来事があったものだ。そんな中で今回は2022年5月の出来事を振り返ってみたい。
東京都遊技業協同組合(都遊協)は4月27日に定例理事会を開催。挨拶に立った阿部恭久理事長は「先入観にとらわれた世間一般からの見方を正していく」ことを訴えている。そして対応案として「そんなにパチンコが悪いのか?!懲りぬ文化と懲りない人たち」と題した一般書の発行企画について、啓蒙啓発を目的に承認していた。
●東京都遊協、パチンコへの先入観の是正に向け一般書「そんなにパチンコが悪いのか?!」発行へ
こうした動きは、パチンコ業界全体が依然として厳しい業況にあることを物語っている。むろんGW明けには多数のホールが閉店しており、小規模ホールを中心に1月期に次ぐ閉店ラッシュが続いていたものだ。その中には長い歴史を持つ老舗ホールも多く、こうした店舗の閉鎖ニュースは本当に寂しい限りである。
●60年以上の歴史に幕を閉じる、神奈川県川崎市の老舗パチンコ店『JAM』が5月15日を以って閉店に
その一方でM&Aにより経営企業が変わるケースも少なからず見られている。「上野駅」周辺にて営業してきた『オリパサインペリアル上野本館(B館)』は5月8日の営業を以って休業すると同時に、浜友観光グループが傘下に収めたことが公告されていた。なお、こちらは2023年1月6日に『楽園アメ横店』としてグランドオープン予定である。
●「浜友観光・楽園」の出店攻勢はまだまだ続く、上野のパチンコ店『オリパサインペリアル』を取得し5月9日から一旦休業へ
業界全体としてはまだまだ苦境が続いていたが、総じて「従業員への配慮が手厚い」ことはパチンコ経営企業における良い側面の一つといえよう。福岡県に本社を構える「玉屋」グループでは、(物価が上昇し家計への負担が増えていることを理由に)正社員およびアルバイト・パートの全423名を対象に「特別一時金」を支給したと発表していた。
●玉屋が生活支援の一環で全従業員に特別一時金を支給、支給総額は1847万円
5月期はとにかく閉店情報が毎日流れてくる中で、最もインパクトが大きかったのは福岡市中央区の『プラザ赤坂』だろうか。福岡県の優良法人「宣翔物産」が運営してきた店舗であり、総設置台数1000台を誇る巨艦ホールであった。十分な好立地にあり、且つ顧客からもそれなりの支持を集めていただけに、閉店ニュースには驚いた方も少なくないはず。不動産として相当高値で売れたようだが、昔ならばパチンコ店としての営業権価値の方がもっと高かったことだろう。時代の変わり目を感じざるを得ない出来事の一つである。
●プラザグループの大型パチンコホールがまさかの閉店に、福岡市中央区の『プラザ赤坂』が5月22日の営業を以って閉鎖される
既存店が生き残り施策を模索する中で、人気機種の大量導入を行うホールも多数出ていた。パチンコ機では「エヴァ」を中心に地域最大を謳うホールが特に目に付いていたもの。そのため中古相場は一向に値下がりする気配を見せず、1台あたりの取引金額はとうとう400万円を超えるケースも出始めていた。そんな大人気機種を数多く揃えているパチンコ企業の筆頭が「日光商事」グループ。『nikko大分中央店』では「エヴァ未来」を185台も設置していたものである。
●日本一への強いこだわりをみせる日光商事グループ、1台あたり400万円超えのパチンコ機「エヴァ未来」を『大分中央店』だけで185台も設置する
一方で苦戦していたパチスロ機においては、30パイ機を増やす店舗が続出していたのもこの頃である。ちなみにマルハンで最大規模を誇る『マルハン上小田井駅前店』では当時、パチスロ機全体のほぼ40%となる247台が30パイ機で占められていたものだ。
●マルハン史上最大となる大型パチンコ店が「ハナハナホウオウ~天翔~‐30」を152台も設置、『マルハン上小田井駅前店』が日本一に
それでもパチスロ機の集客は落ち込み続けて、遊技をやめるユーザーやパチンコ側への流出が止まらなかった。ちなみに弊社で定点観測を20年間続けている大阪のパチンコ激戦区「千日前」エリアにおいても、パチスロ機の客付き状況は過去最低数値を更新していた。
●パチスロ機の客付き率は過去20年間で最低数値を更新する、大阪のパチンコ激戦区「千日前」エリアでも浮上の兆しが見られない
このようにパチスロ6号機はどうにもならない。そんな雰囲気が業界全体を覆っていたのが5月期だったといえる。そんな状況下で月末に飛び込んできたのが「高尾」の第一報である。資金繰りに窮して、5月30日に「民事再生手続開始の申立てを行い、同日付で保全処分命令の発令を受けた」と。このニュースには多くの方が衝撃を受けたことだろう。
●パチンコメーカーの高尾が民事再生法適用を申請 平成30年の販売製品問題により業績が悪化、改善に至らず
低迷する業況が底を打つのはいつになるのか、この頃はまだ想像出来なかったというのが正直なところである。6月期編へ続く。